てくてく工房一級建築士事務所の最新ニュース記事・新着情報。無双釘 (2022-10-14)について

無双釘

茶室の床の間に用いる役釘の中に、無双釘というものがあります。
床の間正面に打ち花生けに用いる釘で、軸を飾るときには釘が引っ込む仕様になっています。
この釘は、度々釘を動かす都合で破損しやすく、いずれ取替えが必要になりやすいため、将来の取替えのために下地に工夫を施します。

一般的に茶室の内壁は左官仕上げである場合が多く、壁に打ち込んだ釘を取り替えるとなると、その左官仕上げ丸ごとやり直さなくてはならないのですが、写真のように「木座」を設けてこの穴に釘を差し込んでおくことで、壁を傷つけずに釘だけを交換することができるのです。
しかしこの木座が厄介で、釘で隠れる大きさでかつ釘が外れない絶妙な締まり具合で穴をあける必要があり、かなりの技術を要します。
今回、職人さんは大変腕の良い方で、見事にこの美しい木座を仕上げてくださいました。
設計士としては、隠れてしまうのが勿体なく感じられ、見せたいくらいに素晴らしい出来映えと感心しきりなのでした。
※無双釘の写真は、今回採用させて頂いた室金物さんのものです。

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